機能性表示食品として水は使えるのか

機能性表示食品の開発を進めるときにはどのような食品の形態を選ぶかが大きな課題になります。自社が得意としているものを選ぶのが合理的ですが、本当に機能性表示食品にできるのかが不安になることも多いでしょう。この記事では特に汎用性がある水について着目し、機能性表示食品にできる可能性があるかどうかを解説します。

機能性表示食品として販売されている味噌汁

機能性表示食品は形態にとらわれない

機能性表示食品は食品として認められるものであれば形態は何でも問題はありません。生鮮食品か加工食品かによって基準が違う部分はありますが、インスタント食品やレト ルト食品、サプリメントなどの様々な形態を選ぶことが可能です。

健康食品としてのサプリメントに用いている成分の機能性を明示して消費者にアピールするために機能性表示食品の届出をするというケースは目立ちます。また、ヨーグルトのようにもともと製造に用いている成分の一つを機能性に関与するとして機能性表示食品にする事例も多くなっています。

しかし、このような形式にとらわれることなく、食品なら何でも機能性表示食品にできるという発想を持つと製品開発力が飛躍的に向上するでしょう。

水を機能性表示食品にすることは可能

機能性表示食品の形態としては食べ物だけでなく飲み物も選べます。水すらも消費者庁に届出をして受理されているケースがあるのは知っておくべきポイントでしょう。もちろん水そのものは機能性表示食品にはできません。

定義上、栄養成分とされている成分がたくさん含まれていても機能性表示食品にはならないからです。水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれている天然水もあります。さらにミネラルを添加して調整することにより、バランスの取れたミネラルの摂取源になるミネラルウォーターも多数開発されてきました。

たとえカルシウムやマグネシウムが大量に含まれていたとしても、栄養機能食品として認められるだけで、機能性表示食品にはなりません。機能性表示食品として受理されるためには機能性関与成分が栄養成分以外のものとして含まれていなければなりません。

そして、その機能性関与成分が十分量含まれていて、推奨される用量を守って摂取すると人に対してポジティブな作用があることが求められます。水にはもともとあまり多くの成分が含まれていないのが一般的です。浄水の過程で失われている面もありますが、天然から自然に水に溶け込む成分の量はたかが知れているのも事実です。

そのため、天然から手に入れた水をそのまま機能性表示食品にするのは現実的には不可能でしょう。参照...機能性表示申請

水を機能性表示食品にするときの課題

水を機能性表示食品にするためには、ミネラルウォーターと同じようにして水に機能性関与成分を添加する必要があります。シンプルな発想ですが、実は意外に難しいということも理解しておかなければならないでしょう。水は純度を高めれば高めるほど味も風味もなくなっていきます。

ほんのわずかな量のミネラルが溶け込んでいるだけで、かすかな旨味を感じられるのが水の特徴です。天然水やミネラルウォーター、水道水などの違いはほとんどがミネラルバランスの違いによって生み出されています。つまり、水は非常に繊細で、ちょっとしたものを溶かし込むだけで味や風味が変わり、消費者からの評価も大きく左右されるのです。

水を機能性表示食品にするときには機能性関与成分を溶かし込まなければなりません。その成分によってもたらされる味や風味が口に合わなかったら消費者は一切手を付けてくれないでしょう。もともと少量でも強い苦みを持っていたり、高い香りを持っていたりする成分もあります。

他の食品に少量添加するだけならごまかせたとしても、水は正直なので苦みや香りが際立ってしまいます。味や風味が本当に消費者から好まれるものでなければ、機能性表示食品にしても売れないということになるのです。これが水の機能性表示食品を開発する上で大きな課題になります。

機能性表示食品として市場に出ている水は巧妙に製品開発を進めています。例えば、ほとんど味も風味もないくらいまで高度に精製した成分を使っているのが典型的です。機能性関与成分は天然から取得しているケースが多く、成分そのものに香りがなかったとしても、夾雑物による香りが問題になることがよくあります。

香りはppmやppbといった極めて薄い濃度でも人の鼻で感じられることが多く、微妙な濃度の違いによって芳しい香りか悪臭かが変わることもあります。このような香りの成分を高度精製をすることで除去するのは合理的でしょう。

香りの問題は解決できる

香りの問題については別の対処をしていることもあります。水は必ずしも無香でなければならないわけではありません。レモンなどの果物のフレーバーを付けた水も高い人気があります。そのため、微量の香気が問題になるときには適切なフレーバーを少量添加することによって整え、消費者にとって好ましい香りに仕上げるのも効果的です。

調香師を抱えている現場でないとなかなか理想的な香りを作りだすことはできないかもしれません。しかし、多少の香りが問題になる機能性関与成分であったとしても、工夫次第では機能性表示食品にできる可能性があります。

味の問題も克服可能

味の問題についても同様に工夫を凝らせば解決できる可能性があります。糖分などを加えてしまうと水としては認められなくなってしまいがちですが、ミネラルを加えて調整できることも珍しくありません。また、味と香りは表裏一体の関係にあるため、爽快感のある香りを加えるなどの工夫によって味の印象を変えることもできます。

炭酸を吹き込んで炭酸水として販売するとまた消費者の受ける印象が変わるため、苦みや渋みも醍醐味になることもあるでしょう。このような工夫をして水を基盤にした開発をすれば味が悪い機能性関与成分も製品化できる可能性があるので、積極的に活用を検討してみるのが大切です。

水も機能性表示食品の候補として前向きに考えよう

水は機能性関与成分を溶かし込むことができる点で魅力があります。普段から飲んでいる水をより良いものにして健康になりたいという人も増えていることを考慮し、水の機能性表示食品の開発を前向きに検討してみましょう。

研究開発の負担は大きいですが、他者との競争力があり、持続的な売り上げにつながる製品の創出につながります。

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