食品の製造開発をする企業にとって機能性表示食品に関連する制度は熟知しておくべきものでしょう。企業の研究開発や営業、マーケティングをする上で重要になるからです。この記事では企業が知っておくと役に立つ機能性表示食品の特徴や現状を解説します。
今後の企業成長にとって機能性表示食品が役に立つのかどうかを考えてみて下さい。
機能性表示食品は科学的根拠を自ら揃えて示す
機能性表示食品は一般の食品と違って機能性関与成分が含まれていて、その成分を摂取することによって人に対して何らかのプラスの作用があるのが特徴です。例えば、ギャバやグリシンは睡眠の悩みを解決するのに役に立つことが以前から示唆されていました。
乳酸菌などの腸内細菌の中で善玉と呼ばれているものはお腹の調子を整えるのに貢献することもよく知られていました。しかし、悩みを解決できると言われているだけであって、特にこの食品を食べるとこのような効果があると紐づけて示されているわけではありませんでした。
科学的根拠に基づいて効果があると示されていなくとも、噂などで効果があると信じられてきたのが特徴です。このような成分に限らず、人に対してプラスの作用がある根拠を示しているのが機能性表示食品です。機能性関与成分を特定し、科学的根拠によって裏付けがあるからこのような作用を期待できると表示できます。
機能性表示食品の特色は企業が自由にエビデンスを探せることです。機能性関与成分も自由に選ぶことができ、文献や自社研究の結果から根拠を示せば機能性表示食品として認められます。自ら根拠を揃える手間があるのは事実ですが、栄養機能食品と違って成分に限定がなく、表示したい作用に応じてエビデンスを整えられるメリットがあります。
特に自社開発を進めてきた成分を使う場合にはスムーズに機能性表示食品として届け出ることができるでしょう。
機能性関与成分のエビデンスの責任は届出者が負う
機能性表示食品について企業が押さえておく必要があるのが、科学的根拠の責任を持つのは届出者だということです。医薬品の場合にも承認申請をするときに前臨床試験や臨床試験などを実施してエビデンスを整え、適用範囲を明確にすることが必要になります。
医薬品と機能性表示食品で違うのは、医薬品は厚生労働省が効果効能について厳格な調査を実施して、本当に申請された適用範囲で有効性があって安全性も問題ないのかを確認することです。機能性表示食品の場合には消費者庁が届出を受理したら販売が可能になりますが、消費者庁は厚生労働省のように厳しい調査を実施しているわけではありません。
提出された資料に基づいてエビデンスを確認し、表示内容と齟齬がないか、誤解を生む表示内容ではないかといった観点で評価する程度になっています。そのため、医薬品の場合には効果効能について厚生労働大臣も責任を負う形になります。
しかし、機能性表示食品では消費者庁が責任を負うことはなく、あくまで届出者の責任とされるのが特徴です。エビデンスについての責任を持つ形にすることで、届出の際に慎重に吟味させる仕組みが整えられていると考えると良いでしょう。
機能性表示食品の注目度は急騰している
機能性表示食品の届出をするにはエビデンスを整えなければならず、販売後は表示している内容について責任を負わなければなりません。企業にとってはメリットがあまりないのではないかと思うかもしれませんが、市場を取るという意味では大きな魅力があります。
健康志向や美容志向が強まっている影響で、機能性表示食品の注目度が急騰しているのが現状です。特にエビデンスが示されていない健康食品でも手に取る人が多くなってきました。しかし、この成分には本当に意味があるのか、この健康食品に含まれている量で十分なのかといった不安は常にあります。
用量の目安が示されていて、機能性もはっきりと表示されている機能性表示食品は消費者にとって大きな魅力です。そのため、健康や美容に着目した食品開発を進める上では、機能性表示食品の届出をすることで売り上げの向上を目指せるメリットがあります。
機能性表示食品の開発を通して消費者目線の開発力を育める
機能性表示食品の開発は企業にとって今後の開発力を向上させるのにもつながる重要な取り組みです。食品は消費者が自由に選んで購入するものなので、消費者目線で開発をしなければ市場を獲得できません。消費者目線での開発は機能性表示食品では特に重要になるため、自社の開発力強化につながります。
どのような作用がある機能性表示食品でも売れるというわけではなく、消費者が抱えている健康や美容の悩みを解決できるものでなければなりません。その市場調査から始めて適切な成分を選定したり、既存成分の効果検証をしたりすることによって売れる機能性表示食品を開発できます。
開発にかかる時間も費用も大きくなるため、慎重な調査に基づいて確実性の高い方法で開発を進める意識も高まるでしょう。既に他社の機能性表示食品が市場に出回っているときに、新規開発をするかどうかもエビデンスに基づいて考えることができます。
消費者の悩みを別の角度から解決に導く機能性関与成分を見つければ他社を圧倒できるのではないかという考えが生まれることもあるでしょう。消費者にとってメリットになる製品を開発するという視点が重視される現場になり、競争力のある企業に成長できます。
機能性表示食品の届出の受理には時間がかかる
機能性表示食品について企業が最後に押さえておくべきなのがタイムスケジュールです。機能性表示食品は消費者庁に届出をしてからすぐに認められるわけではありません。大抵は差し戻しを受けることになり、トータルで60日程度の期間がかかってしまいます。
受理されたときから表示をして機能性を謡うことができるようになるため、およそのタイミングを考えて計画的に準備を進めるのが大切です。文言の変更になる可能性もあることを考慮して、パッケージは受理されてから製造するといった工夫もしましょう。
機能性表示食品の特徴を生かして開発をしていこう
機能性表示食品は機能性関与成分を自由に選定して、企業が自らエビデンスを揃えて届け出ることができるのが特徴です。市場が広がってきていることから、食品開発をしている企業にとっては活用意義が大きくなっています。
消費者目線の開発力を高めるのにも有効なので、積極的に機能性表示食品の開発を検討していきましょう。